せっかくの夏休みなのに寮監を引き受けるハメになった有村啓は、深夜の寮監室でヒマを持て余していた。教師になって何が嬉しいって、長期の休みがあることだけなのに…。
そこへ突然やって来た斯波邦明。学業優秀で有能な会長として知られる斯波が言い出したのは、とんでもないことだった!? ちょっと待て、その写真、お前どこで手に入れたんだ!?

【邦明】
「決まってるだろ? あんたとしたいって言ってるんだよ」
【啓】
「斯波っ! ふざけるなっ!!」
【邦明】
「ふざけてるもんか。俺はマジだよ。なっ、先生…いいだろう?」
【啓】
「よっ…よせっ!!」

有無を言わさぬ雰囲気で斯波は俺の手を掴み、そのままベッドへ突き飛ばした。咄嗟に起きあがろうとした俺の上に覆い被さり、勢いに任せて唇をふさがれる。熱い吐息と舌が同時に口腔内へと侵入し、一瞬呼吸まで奪われた。

【啓】
「よせっ…斯波っ。やめろっ…」

太い指が引き千切るようにしてシャツのボタンを外し、力任せに前合わせを開かせると、そのままズボンのベルトへとかけられる。

足を踏み出し、腕を伸ばし、斯波が俺を抱きしめる。
突然の事にギョッとして、俺は頭の中が真っ白になってしまって、動く事さえ出来なかった。
【啓】
「…斯波?」
【邦明】
「いいから、そのままじっとしてろよ」
背に回された逞しい腕に力がこもり、ギュッときつく抱き寄せられる。
厚い胸板がシャツ越しに押し当てられて、不覚にも胸が高鳴ってしまった。
【邦明】
「嬉しいぜ。あんた…わざわざ俺のために来てくれたんだな。そんな事を言いに来るくらい、俺の事が気になるのか?」
【啓】
「なっ…?」
俺がこいつを気にしている?
だからわざわざ部屋まで来た?
考えてもいなかった事を口にされ、俺は反射的に斯波の身体を押し返そうとしてしまう。
だけど、それは出来なかった。
俺を抱きしめる逞しい腕に、心までもが絡み取られてしまったからだろうか。
間近で囁かれた声に混ざった吐息の熱さに、身体じゅうが震えてしまったからだろうか。
それとも自惚れじみた言葉の中に、ホッとしたような響きがどこかに感じられたからだろうか。
俺自身にも、わからない。
【邦明】
「本当に、嬉しいぜ。…先生…」
大きな手が、そっと背中を撫で下ろす。
指先だけでなぞられるような感触に、身体の芯がぞくりと痺れた。

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