「俺の弟が家出をして、そっちに行ってるかもしれない」
先に帰郷した親友から、堤大吾に突然かかって来た電話。それが大吾と雅哉の出会いだった。
寮の花壇で佇んでいた少年を自分の部屋に招き入れる大吾。面倒見のいい大吾に、最初はおずおずとしていた雅哉も次第に心を開いていく。
でも、雅哉にはある「秘密」があったのだ。

【大吾】
「どうした? そんな所に隠れてないで、出て来いよ」
【雅哉】
「でも、僕…」
うーん。恥ずかしいのかなぁ…。
人見知りするタチとか。
兄貴の和哉は、図々しいくらい人懐っこい奴なのにな。
【大吾】
「いつまでもそんな所に立ってると、日射病になっちまうぞ。ホラ、こっちに来いって」
【雅哉】
「あっ…」
【大吾】
「暑かっただろ? とりあえず部屋に入って、冷たいモノでも飲もう」
【雅哉】
「う…うんっ」
俺が手を差し伸べると、雅哉はほとんど反射的に、こちらに向かって手を差し出した。
手を捕まえて引っ張ると、一瞬ビックリしたみたいだった。
だけどやっぱりホッとしたのか、おさなげな顔が夏の花のようにパッとほころぶ。

【雅哉】
「欲しそうな顔してるーっ。大吾も食べるーっ?」
【大吾】
「えっ? 俺っ?」
【雅哉】
「ハイッ。アイスーッ」
【大吾】
「むぐっ」
ヒヤッと冷たい感触が、俺の唇に押しつけられた。
前歯の先から歯茎に向かって鈍い痺れが走る中、ベッタリとした甘さが、舌の先から広がっていく。
【大吾】
「いきなり、出すなよ」
【雅哉】
「アハハーッ。だって大吾が、もの欲しそうな顔をしてたんだもーん」
【大吾】
「もの欲しそうは、ないだろ。ったく…」
楽しそうに笑いながらも、雅哉は俺に差し出したアイスキャンディーを引っ込めるような素振りは見せなかった。
改めて口を開け、アイスの先端を小さくかじる。
とろけかけた冷たい感触が、舌の上に零れ落ちた。
【雅哉】
「やったぁっ! 大吾、間接キスだぁっ!!」
【大吾】
「か…間接キスゥ?」
【雅哉】
「そうだよ。そこ、僕が舐めてたところだもーん」
【大吾】
「なっ、お前…。馬鹿なコト、言うなって」
【雅哉】
「大吾、顔真っ赤ーっ」
【大吾】
「か、からかうなってっ!!」
【雅哉】
「真っ赤、真っ赤ーっ」
【大吾】
「だからやめろってっ!!」

■原画家コメント■

初めまして! 寿遊星といいます。
自分の絵がこんなふうになるなんてびっくりしています!
自分的にはかなりの大冒険です。

(寿 遊星)

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