
3.
「藤堂……っ」
「いつもより感じやすくなってるみたいじゃねえか。気持ちの上で追いつめられた方が燃え上がるタイプか?」
「や、だ……ああ……っ」
思いやりの欠片もなく、藤堂の手が無造作に俺のモノを掴んだ。根元から先端までを、乱暴に扱き始める。咄嗟に膝を立てその手から逃れようと試みるが、許されない。
「嫌だ嫌だも好きのうち。いい加減自覚したほうが、いいぜ。赤井、お前は俺のことが好きなんだってことを」
「そ、んな──」
違うと続けようとした言葉は、さらに強くなる藤堂の手に阻まれる。堪え性もなく先端から溢れ出した蜜を空いている方の手の指でたっぷりすくい、それを腰の奥へ塗りつけようとする。
「もう、駄目だ。藤堂……さっき、やったばかりで」
「だから、駄目じゃねえって。こうして指を軽く突っ込むだけで」
言葉のとおり、藤堂の指がぐっと狭い器官の中に入り込んでくる。先ほどの情事のせいでまだ中は熟れたままで、微かな抵抗だけで、藤堂の指を奥まで呑み込んでしまう。
「んんっ」
「ほーら、みろ。感じてるの、自分でもわかるだろう? 俺の指、痛いぐらいにぎゅうぎゅう締めつけてやがる」
「違う、違うっ」
「だから、何が違うって言うんだ? お前は俺と、俺のセックスが好きなんだ。それから、蒼山のことも、な」
不意に口にされる名前に、俺ははっと息を呑む。蒼山は、俺の頭のすぐ横に立っていた。
「俺、一人じゃない。無理強いされながら、さらに蒼山の一途な想いをぶつけられることに、お前は酔いしれてる」
内側の熱い部分を指で引っ掻かれる。その瞬間、藤堂の掌の中の俺のものが、一際硬くなり、先走りの液をどろどろと溢れさせた。
「俺のこの言葉だけで、こんなに感じてるの、わかってんだろう?」
藤堂は俺のものから手を外し、たっぷり濡れた自分の指を、これみよがしに嘗めていく。俺の体を溶かし、別のものに変えていく藤堂の、長くていやらしい指に、まるで生き物のような舌がまとわりついていく。
ねっとりとした動きに、指を入れられたままの下腹が、痛いほどに疼く。
「俺が欲しいんだろう?」
タイミングを逃すことなく、藤堂は煽ってくる。
「指なんかじゃなくて、俺の、熱くて、太いモンが、ここに」
指を前後させながら中を愛撫されて、体中火傷しそうなほど熱い。ここで拒めるほどに、俺は強くない。それから、藤堂のことが嫌いじゃない──。
俺は躊躇いがちに、藤堂の問いに頷きで応じる。だが、眼鏡の下の瞳が意地悪に笑う。
「教えただろう? 欲しいなら、言葉で言えって。そうじゃねえと、いつまでもこのままだぜ?」
すっと指が抜かれ、銜えていた場所が強く浅ましく収縮するのがわかる。
「──藤堂」
「そんな声でねだったところで駄目だ。赤井、欲しいなら欲しいって言えよ。な、蒼山もそう思うだろう?」
恐る恐る、俺は顔を横に向ける。蒼山は眉間に皺を刻み、唇を噛み締め、俺を見下ろしている。屈辱と、欲望とが混ざった瞳は、俺と同じ。蒼山は俺の気持ちをすべてわかっている。そして俺もまた、蒼山の気持ちがわかっている。
終わらせようということが、無理なのだ。藤堂の言うとおり、俺は藤堂のことを少なからず思っている。そして、蒼山のことも。
二人に向ける感情は違う。だが、どちらか一方のみを選ぶことは、俺にはできない。そして藤堂はそんな風に苦しむ俺たちのことを知っていて、この状況を楽しんでいる
。
最低で、最悪。でも、憎めない。
「交換条件を出そう。赤井のことが好きで好きでたまらない蒼山のモンを慰めてやる代わりに、俺はここに突っ込んでやる。それで、どうだ?」
「藤堂っ」
掠れた蒼山の抗議の声は弱い。
「そんな怖い顔すんなよ。赤井は別に構わないって言ってるぜ。な、赤井?」
藤堂の確認のあと、蒼山もまた俺の顔を見る。そんな、辛そうな顔をしないでほしい。俺は──微かな罪悪感と後ろめたさを覚えながら、体の向きを買え、蒼山のズボンのファスナーに手を伸ばす。
「瞭……」
小さく首を振って、俺は形だけ抵抗しようとする蒼山の手をどけ、そこで硬くなっている熱を取り出した。

「なんだかんだ言って、ガチガチにしてんじゃねえか」
揶揄する藤堂の言葉は流し、俺は蒼山の想いを口に含む。
「う……」
先端を軽く吸い上げるだけで、快感を訴える吐息が聞こえてくる。こんな関係を終わらせようと言いながら、俺は蒼山が俺の体で快感を訴える姿を見るのが好きだった。普段感情を表に出さない男が、このときだけは、俺を愛していると全身で訴えている。
藤堂も同じだ。冷ややかな言葉を投げ、揶揄しながらも、俺の中で射精する瞬間だけは、愛されているような気がするのだ。
「観念しろよ」
藤堂が、俺の中に挿入ってくる。
「お前も蒼山も俺も、もう後戻りできないところにまで来てるんだからさ」
(初出:GAMEピアスvol.13)
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